「こうしたい」で生きていく

昔のドラマや音楽を観たり聴いたりしていると、「今から会わないか?」なんてセリフを見かけることがある。そういえば私も、昔は友達から「今、村さ来(居酒屋)にいるんだけど、来ない?」みたいな誘いがよくあった。 でもいつの頃からか、そういうことが全くなくなった。もちろん、私がもう若くないというのもあるだろう。でも、それだけではない気がする。 今では、人と会うときも、仕事を始めるにも、まずは互いがスケジュール帳を開き、空いている日を探して、その「枠」に予定を入れる。 でもほんとうは、「今会いたい人に会う」「今やりたい仕事をする」でありたいと思っていたりする。そのタイミングを後ろ倒しにしてしまえば、熱はもう冷めてしまうかもしれないのだから。 もちろん、それが現実的に難しいことも理解している。でも、できる範囲でいいから、スケジュールに人を合わせるのではなく、人にスケジュールを 合わ せたいって思う。そのほうがずっと創造的で、ずっと豊かな気持ちで生きることができるんじゃないか。 今のようなスケジュール優先の生き方は、どこか物質主義に侵されてしまっている気がしてならない。「目に見えるもの」「数値化できるもの」ばかりを優先してしまい、感情や偶然は軽視されがちだ。スケジュールは「見える」が、感情は「見えない」からだろう。 スケジュール管理によって得られるメリットは大きいとは思う。しかしその一方で、「今この瞬間の気持ち」を脇に追いやる生き方は、自分自身を疲弊させ、創造性や直感も鈍らせてしまうようにも思う。 だから私は、会社でもみんなに対して「こうすべきだ」という言い方はしない。代わりに「こうしたい」と言うようにしている。そのほうが、人間の熱が感じられるし、創造性も発揮されやすいような気がするから。