年頭にあたり ~ジョブ型雇用と日本人~
日本の大手企業がこのところ相次いで「ジョブ型」と呼ばれる雇用制度を導入している。コロナウイルスの感染防止のため、リモートワークをする人たちが増えたからだ。 古来から日本企業の多くは、社員が職場の問題に自ら気づき、それを解決していこうとする組織風土を持っている。個が状況に応じて有機的に連携しながら全体を形作っているのだ。この組織は共同体の一員として一体感を持って働くことができる一方、個々の仕事の内容や範囲が不明瞭であるため、リモートワークに対応しにくい。 そこで「ジョブ型」という雇用制度を導入する企業が増えた。個々の仕事の内容や範囲を明確にし、評価方法も明確にする。そうすればリモートワークにも対応できるというわけだ。 しかし私は、そうした流れとは逆の流れを感じている。 以前、NewsPicksというニュースアプリで、「なぜ、次世代リーダーにセンスが必要なのか」という記事を見た。「役に立つモノ」がコモディティ化しているなかで、「センスが良いモノ」を作り出す能力は、今後もますます重要になってくる。だから、スキルよりセンスが大切なのだという。 私もその通りだと思う。 もう機能や性能といった機能的便益だけで差別化を図ることは困難な時代になってきている。だからこそ、自社独自の世界観を持ち、その世界観に魅力を感じてもらえるような、情緒的価値を生み出す経営をしていく必要がある。そのためには、スキルも大切ではあるが、それ以上にセンスが大切になってくる。 スキルとは、言うまでもないが、まずプロジェクトなり会社のコンセプトがあり、そのコンセプトを達成するために細かく分業する。その分業された仕事に対する能力がスキルである。一方、センスは、それとは逆向きの説明になる。分業された仕事をコンセプトに合わせてバランスを考えながら整えていく能力がセンスである。 たとえばファッションで言うと、服や靴、時計など、それぞれ素晴らしいものを身に着けたとしても、全体から見たらどうなのか、場所や場面から見たらどうなのか、ということも考慮しなければ、それは素晴らしいとは言えない。そのバランスを整えることができる能力がセンスである。 ジョブ型雇用というのは、働く人が自分のスキルをもとに割り当てられた職務だけを遂行するため、会社全体を俯瞰的に見る必要はないのだと思う。極端な言い方だが、それがどんな会社であろうとあまり